優作とのヴァーチャル対談 HOMEに戻る

 まったく、勝手に、叱られるのも承知の上でこんなものを作ってみました。タブーに触れる罪は百も承知です。しかし!もし!優作さんが旅立たずにいたら今どうしてるだろう?という思いというか、悔恨の念がどうしても消せず、発想を膨らませてみたのです。僕なりに優作さんだったらこう答えるのではないか、と研究してみたのですがやってみるとなかなか・・・・。やっぱり精神世界まで他人に近づくのは無理でした。
 一応、設定としては、「華麗なる追跡」のあと、もう一本、村川さんと「チャイナタウン」を撮ったということにして、それについてのインタビューということにしました。この映画には、ゲストとして敬愛していたデ・ニーロさんを相手役とし、幻の共演が実現したことにしてあります。そんな、「ブラックレインで翼を広げた優作さん」が、これからまさに「世界に向けて飛び立たん」と力を込めている印象を表現できればと思いました。

 なお、現実感を出すために実名で関係者の方々を登場させてしまいましたが、もちろんここに書かれていることはフィクションであり、ご本人の発言や仕事とは一切関係ありません。優作を愛する者の「夢想」,「たわごと」だと思って少々付き合ってやって下さい。

「チャイナタウン」を撮り終えて

Master: ど、どうも。はじめまして。Masterです。本日はどうぞよろしく。
松田: どおも。
Master: ・・・・・・・・・・(しばし感動に浸る)
松田: 久々のインタビューなんで、なんか・・・変な感じですね。
Master: そうですか?安心してください。私は初めてですから(笑)それでは、早速ですが先日撮り終えたばかりの「チャイナタウン」について聞きたいんですが・・・・。
松田: もうね、最高だね。デ・ニーロは。それにつきるよ今回は。「ブラックレイン」演ってみてね、マイケル・ダグラスやアンディ・ガルシアはね。そりゃ素晴らしかったよ。でもね、捉えられたの。予想の範囲だったわけですよ。俺は演ってて、初めは負けたくないっていうか、そういう気持ちもあったんだけど・・・。レベルはね。変わらないんですよ。ところが・・・、デ・ニーロは怪物だったね。(笑)
Master: その昔、優作さんはデ・ニーロについて、「キング・オブ・コメディまでは捉えていた。でも以降はただ見てるだけ、今世紀生きているうちは勝てない」と、おっしゃっていましたが、その辺の認識は変わらないですか?
松田: 全然変わらないね。むしろその思いに確信を持ったっていうか・・・。デ・ニーロは、役者としてだれも触ったことがない世界に触ってるんだ。それはもう、俺なんかと比べられっこない世界だよ。でもね、嬉しくなってくるね。上には上がいるんだよ。まだまだ勉強することなんざ、いくらでもあるってことがわかったね。
Master: しかし、あれですね。デ・ニーロとの競演がこういう形で(日本映画で)実現するとは思いませんでしたね。前にリチャード・ギアが黒沢監督の映画に出ましたが、あれは監督に惚れ込んだということでしょう。今回のは優作さんありき、で決まった話ですよね?
松田: まあ「ブラックレイン」での評価の結果なんでしょうね。向こうは日本と違って、良い作品を作り上げて実績さえ上げれば、スタッフでも役者でも話は来るんですよ。後から。そういう意味ではとても素直な、ある意味どん欲な構造なんです。さすがに最初にデ・ニーロのエージェントから話が来たときには驚きましたけどねぇ。
Master: 「ブラックレイン」は全米で3週連続で1位でしたからね。日本もこれからは、徐々に方向が変わってゆくでしょうね。徐々にですが・・・。しかしデ・ニーロさんはそうとう惚れ込んでいるみたいですよね!優作さんに。だってそもそもはショーン・コネリーが監督でデ・ニーロと一緒という話がきたわけでしょ?でもその話に乗る前に優作さんは「チャイナタウン」に出演を決めていた。そしたら、そこにデ・ニーロが入ってきたわけじゃないですか。「待ちきれない!」ってことだったんですかね?
松田: いや、そういうことじゃないんでしょうけども・・・。信じられない話でしょ!?(笑) まぁ俺としては「ブラックレイン」のあと、これでもある領域に達したような気持ちでいたんですよ。俺のやってたことが間違っていなかったって確認出来ましたしね。世界マーケットで。それで達観するのはまずいんでしょうけども。ただそのままメジャー路線の大作に連続で出るのは、こう、気持ちがね。なんか一回切らなきゃダメかなと。心の中では「すぐにでも飛びつきたい!」って気持ちもあったんですけどね。正直に言えば(笑)。「華麗なる〜」をやって村川さんと久々に組んで、もうちょっとそれっぽいのをやって整理を付けてからでもいいかな、と。そういう話をしたんです。向こうのエージェントにね。そうしたらなぜだかこういうことになっちゃってね。あとは黒沢さんに聞いて下さい!(笑)
Master: わかりました(笑) ところで今回村川監督はどうでしたか?テレビの「華麗なる追跡」以来ですよね。映画としては80年の「野獣死すべし」以来。やっぱり僕らなんかからすれば、優作さん+村川監督という組み合わせでアクションものが見たいってのは、素直な意見なんですが。
松田: 「華麗なる〜」の時にね、結構もめちゃったんです。現場で。村川さんはとても才能のある監督ですからね、とにかく言いたいことは全部言いました。特に「ブラックレイン」の直後だったでしょ? リドリー・スコットのシャープな感覚とか、考え方を経験しちゃうと、どうしても引きずってね。村川さんにすれば「どうせテレビだし、ジョイナーさえ出せば」みたいな気持ちもあったんじゃないかな。で、もめちゃった! しかしそのせいでしょうねぇ。今回は全然違った!(笑) 監督、予習しまっくてましたねぇ。監督なりの細かい設定ができてましたから。まあ事前に丸山(昇一=脚本家)と監督と、3人でじっくり話し合いましたからね。(撮影に)入ってからはもう僕は口出しはしなかった。映画は監督のものであるべきだしね。
Master: 久々に映画で組んでみて、やっぱり村川監督は良かったと。
松田: 学校で勉強して、デビューの順番待ちをしている監督さんが多いからですからね。そうじゃないだろって。年功序列なんか関係なく、若くても才能ある奴はいるわけで。やっぱり自分の世界をしっかり持っていて、いろんな現場で勉強してきた監督と組んでいきたいです。僕は役者ですからね。それに専念させてくれる、遊ばせてくれる監督がいいなあ。
Master: 「ア・ホーマンス」は最初で最後の監督だったと・・・。
松田: 勘弁してくださいよ!(笑)
インタビューに応える優作さん
Master: じゃあ、今名前が挙がりましたが、丸山さんの脚本についてですが。「チャイナタウン」は、丸山さんの書いた「チャイナタウン」と「緑色の血が流れる」を足して完成されたとか・・・・。
松田: 「チャイナタウン」は元々テレビの1時間ものを想定して作ったホンなんです。テレビの「探偵物語」あるでしょ。あれ、どうしても続編やれってね。でも同じことやるなんてね、ぞっとするし。それで作ったんです。で、書き直しているうちに話が膨らんじゃって。でもこれだけだと単なる探偵の話でしょ?なんか足りないなぁと、黒沢さんなんかと話していたわけですよ。で、丸山と後から作った「緑色〜」のニュアンスを足したらどうかと。日本でSF撮りたかったからね。今やっぱりエンターテイメントにこだわりたいから。俺は。そういうことでできあがりました。
Master: そうすると脚本としてはとっても時間がかかってるんですね。構想段階から考えると。
松田: そりゃあもう!(笑) でも日の目をみて良かったですよ。もっと、メジャーじゃないばっかりに実現できなかった話がたくさんあるんですから。あれ、いつか全部やりたいなあ。丸山にも悪いし(笑)
Master: またデ・ニーロさんの話ですが、「ブラックレイン」では優作さんがヒール(悪役)、今回は主役の「探偵ブン」が優作さんで、ヒールがデ・ニーロさんですね。
松田: 怖かったですよぉ。細かい演技のことはともかく、本当に単純に怖かった!こっちも死ぬ気で殺しにかかった。もう今世紀最高の悪役だね(笑)。
Master: ファンからすると優作さんのアクションが見れるのが嬉しいってのが、まず第一で・・・。
松田: いや、大したことないですよ。肉体的なアクションならもっと他にすごい人達いますからね。そっちを観てもらって。もっと、普通の人間が恐怖を感じて抵抗するとか、守るため、生きるためのアクションですから。そこんとこを観て欲しい。より、リアルな嘘で騙したいんですよね。
Master: じゃあ最後に。初めの方でもちょっと話がでましたが、日本とハリウッドの違いですか。その辺をもう少し・・・。
松田: 簡単なことですよ。向こうは評価されればもっと大きな仕事が来る。だめなら来ない。実力主義って言うか・・・・・・。怖いですけどね。日本はダメですね。そういう点。何度も言ってるんですが「家族ゲーム」をやっても「それから」をやっても。あの2つはメジャー映画でしょ?難しく考える映画じゃないんだ。エンターテイメントをやったわけだから・・・。それがどうして「金だすから、もっと面白いもん見せてくれ」って話が来なかったんですかねぇ?もう姿勢の違いですね。映画に対する・・・・。ちょっと関係ない話ですけど、向こうは各市役所だかに映画の担当係がいるんですよ。それで、ロケするんでも何でもそこが窓口になっていろいろ手伝ってくれるんです。自分の街が映画に出るってことで、そりゃもう全面的に協力してくれる。映画人て尊敬される対象なんですね。日本はどうか。「ブラックレイン」でも大阪を使ったのは東京が許可だめだったからなんです。「たかが映画のために」なんですよ。認識が。
Master: 誰かが、映画に対する認識を変えていかなきゃならない。それが優作さんと"共犯関係"を作ってきた方々の共通の思いなんでしょうね。
松田: ここ10年で、日本映画の、というか一部の作り手さん達のレベルは確実に上がっているわけです。もう世界がそれを認めているわけですからね。泣き寝入りしていないで、起きあがってメジャーを目指すべきなんですよ。難しい、考え込んじゃうようなのじゃなく、こう、映画館を後にしたときに入る前と頭が逆むきになっちゃうような、別の時間を過ごせたなと思わせてくれる映画を。じわ〜っと来るのとかね。いけますよ。もう。
Master: レベルは変わらないと。ところで、たけしさんの「HANA-BI」とか、ああいうのはどうご覧になってるんでしょうか?ヴェネチア映画祭でグランプリでしたよね?
松田: あれ、見てないんです。でもシャープですよね。たけしさんの撮る絵は。タレントの余技の範囲ではない、才能があるんでしょうね。暴力って、狂気を感じさせないとダメなんです。上っ面だけの暴力は、俺も散々テレビでやってきましたけれども、もう時代じゃないでしょ?観客もばかじゃないしね。たけしさんには狂気を感じる。狂気を今、日本でできる俳優あんまりいないんじゃないですか?
Master: そうですね。ちょっと、あまり思い浮かばないですね。たしか、和田勉さんが「狂気を演じられるのは、優作さんと沢田(研二)さんとショーケンだ」っておっしゃってたように思いますが。
松田: ただ、たけしさんも次、どうするのかね。ずっとあの路線でいくわけにゃいかないだろうし。才能があるだけにそこが悩ましいね。この国はレッテル貼るのが好きだから。「狂気の役者たけし」なんてなっちゃったら、その後やりにくいよ。
Master: 優作さんもありましたからね。アクションスター松田優作!(笑) あと、日本映画で元気と言えばアニメがありますが。最近は「ジャパニメーション」とか言って海外でも評価はかなり高いらしいですよ。優作さんはあまりそういうのは・・・。
松田: あっちはちょっと僕のジャンルと関係ないですけど(笑) でもね、この前子供と「もののけ姫」観たんですね。こりゃもう飛び抜けていますね。宮崎さんは自分の世界を確実に持っていて、それをよく知ってる。映画としてはどうかな、とも思ったんですが、あれ海外じゃ作れないですよ、絶対。日本人の世界だね。
Master: 優作さんともののけ・・・・。
松田: 別にジャンルで好き嫌いはないです。面白いものを観たいし。でもまったく別ものですね。
Master: そうですね。細かい人間描写や心理的なニュアンスはなかなか伝えにくいですよね。アニメは。ただ、誰も観たこともないような、それこそ実写では実現不可能な映像や世界を見せてくれる。日本はSFにお金をかけないから、その分アニメで空想力を働かせて満足感を満たしているんですかね・・・・。さて、え〜そろそろお時間なんですが。それでは今後について教えて下さい。
松田: 少し、時間をおいてじっくり取り組みます。ハリウッドだから、日本だからという区切りはもうなくなったし。特に意識してないですね。とにかく世界を相手にして遊ばせてもらおうと、やっとそういう風に思えるようになれました。
Master: かっこいいですね。余裕ですね。(笑)
松田: いや、そういうことでもなんですけど・・・・。まぁ、あと何本出れるかわかりませんが、一作一作にじっくりとやっていきたいと思います。もう40代ですからね、無茶苦茶やっていこうと思っています。今から楽しみですね。(笑) そういうことで今後ともよろしくお願いします。
Master: 本日はどうもありがとうございました。公開を楽しみにしています!
松田: ありがとうございました。


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