Master: |
じゃあ、今名前が挙がりましたが、丸山さんの脚本についてですが。「チャイナタウン」は、丸山さんの書いた「チャイナタウン」と「緑色の血が流れる」を足して完成されたとか・・・・。 |
松田: |
「チャイナタウン」は元々テレビの1時間ものを想定して作ったホンなんです。テレビの「探偵物語」あるでしょ。あれ、どうしても続編やれってね。でも同じことやるなんてね、ぞっとするし。それで作ったんです。で、書き直しているうちに話が膨らんじゃって。でもこれだけだと単なる探偵の話でしょ?なんか足りないなぁと、黒沢さんなんかと話していたわけですよ。で、丸山と後から作った「緑色〜」のニュアンスを足したらどうかと。日本でSF撮りたかったからね。今やっぱりエンターテイメントにこだわりたいから。俺は。そういうことでできあがりました。 |
Master: |
そうすると脚本としてはとっても時間がかかってるんですね。構想段階から考えると。 |
松田: |
そりゃあもう!(笑) でも日の目をみて良かったですよ。もっと、メジャーじゃないばっかりに実現できなかった話がたくさんあるんですから。あれ、いつか全部やりたいなあ。丸山にも悪いし(笑) |
Master: |
またデ・ニーロさんの話ですが、「ブラックレイン」では優作さんがヒール(悪役)、今回は主役の「探偵ブン」が優作さんで、ヒールがデ・ニーロさんですね。 |
松田: |
怖かったですよぉ。細かい演技のことはともかく、本当に単純に怖かった!こっちも死ぬ気で殺しにかかった。もう今世紀最高の悪役だね(笑)。 |
Master: |
ファンからすると優作さんのアクションが見れるのが嬉しいってのが、まず第一で・・・。 |
松田: |
いや、大したことないですよ。肉体的なアクションならもっと他にすごい人達いますからね。そっちを観てもらって。もっと、普通の人間が恐怖を感じて抵抗するとか、守るため、生きるためのアクションですから。そこんとこを観て欲しい。より、リアルな嘘で騙したいんですよね。 |
Master: |
じゃあ最後に。初めの方でもちょっと話がでましたが、日本とハリウッドの違いですか。その辺をもう少し・・・。 |
松田: |
簡単なことですよ。向こうは評価されればもっと大きな仕事が来る。だめなら来ない。実力主義って言うか・・・・・・。怖いですけどね。日本はダメですね。そういう点。何度も言ってるんですが「家族ゲーム」をやっても「それから」をやっても。あの2つはメジャー映画でしょ?難しく考える映画じゃないんだ。エンターテイメントをやったわけだから・・・。それがどうして「金だすから、もっと面白いもん見せてくれ」って話が来なかったんですかねぇ?もう姿勢の違いですね。映画に対する・・・・。ちょっと関係ない話ですけど、向こうは各市役所だかに映画の担当係がいるんですよ。それで、ロケするんでも何でもそこが窓口になっていろいろ手伝ってくれるんです。自分の街が映画に出るってことで、そりゃもう全面的に協力してくれる。映画人て尊敬される対象なんですね。日本はどうか。「ブラックレイン」でも大阪を使ったのは東京が許可だめだったからなんです。「たかが映画のために」なんですよ。認識が。 |
Master: |
誰かが、映画に対する認識を変えていかなきゃならない。それが優作さんと"共犯関係"を作ってきた方々の共通の思いなんでしょうね。 |
松田: |
ここ10年で、日本映画の、というか一部の作り手さん達のレベルは確実に上がっているわけです。もう世界がそれを認めているわけですからね。泣き寝入りしていないで、起きあがってメジャーを目指すべきなんですよ。難しい、考え込んじゃうようなのじゃなく、こう、映画館を後にしたときに入る前と頭が逆むきになっちゃうような、別の時間を過ごせたなと思わせてくれる映画を。じわ〜っと来るのとかね。いけますよ。もう。 |
Master: |
レベルは変わらないと。ところで、たけしさんの「HANA-BI」とか、ああいうのはどうご覧になってるんでしょうか?ヴェネチア映画祭でグランプリでしたよね? |
松田: |
あれ、見てないんです。でもシャープですよね。たけしさんの撮る絵は。タレントの余技の範囲ではない、才能があるんでしょうね。暴力って、狂気を感じさせないとダメなんです。上っ面だけの暴力は、俺も散々テレビでやってきましたけれども、もう時代じゃないでしょ?観客もばかじゃないしね。たけしさんには狂気を感じる。狂気を今、日本でできる俳優あんまりいないんじゃないですか? |
Master: |
そうですね。ちょっと、あまり思い浮かばないですね。たしか、和田勉さんが「狂気を演じられるのは、優作さんと沢田(研二)さんとショーケンだ」っておっしゃってたように思いますが。 |
松田: |
ただ、たけしさんも次、どうするのかね。ずっとあの路線でいくわけにゃいかないだろうし。才能があるだけにそこが悩ましいね。この国はレッテル貼るのが好きだから。「狂気の役者たけし」なんてなっちゃったら、その後やりにくいよ。 |
Master: |
優作さんもありましたからね。アクションスター松田優作!(笑) あと、日本映画で元気と言えばアニメがありますが。最近は「ジャパニメーション」とか言って海外でも評価はかなり高いらしいですよ。優作さんはあまりそういうのは・・・。 |
松田: |
あっちはちょっと僕のジャンルと関係ないですけど(笑) でもね、この前子供と「もののけ姫」観たんですね。こりゃもう飛び抜けていますね。宮崎さんは自分の世界を確実に持っていて、それをよく知ってる。映画としてはどうかな、とも思ったんですが、あれ海外じゃ作れないですよ、絶対。日本人の世界だね。 |
Master: |
優作さんともののけ・・・・。 |
松田: |
別にジャンルで好き嫌いはないです。面白いものを観たいし。でもまったく別ものですね。 |
Master: |
そうですね。細かい人間描写や心理的なニュアンスはなかなか伝えにくいですよね。アニメは。ただ、誰も観たこともないような、それこそ実写では実現不可能な映像や世界を見せてくれる。日本はSFにお金をかけないから、その分アニメで空想力を働かせて満足感を満たしているんですかね・・・・。さて、え〜そろそろお時間なんですが。それでは今後について教えて下さい。 |
松田: |
少し、時間をおいてじっくり取り組みます。ハリウッドだから、日本だからという区切りはもうなくなったし。特に意識してないですね。とにかく世界を相手にして遊ばせてもらおうと、やっとそういう風に思えるようになれました。 |
Master: |
かっこいいですね。余裕ですね。(笑) |
松田: |
いや、そういうことでもなんですけど・・・・。まぁ、あと何本出れるかわかりませんが、一作一作にじっくりとやっていきたいと思います。もう40代ですからね、無茶苦茶やっていこうと思っています。今から楽しみですね。(笑) そういうことで今後ともよろしくお願いします。 |
Master: |
本日はどうもありがとうございました。公開を楽しみにしています! |
松田: |
ありがとうございました。 |