優作最後のテレビ出演 HOMEに戻る

「オシャレ30◆30」

3030出演時の優作  優作が亡くなるほんの3ヶ月前に放送された、「オシャレ30◆30」(今では「オシャレイズム」ね)を再録しました。一言一句逃さず拾い集めました。こりゃもう気合いですね笑。松田優作という人間を理解する上で、少しは役に立つかと思いますので是非ご覧下さい。
 彼はこの時、「ブラックレイン」を終えた頃で当然もう自分が癌におかされていることを知っていました。もちろん自分が死ぬなんて考えてはいなかった(超・前向きな人だったし!)はずですが、それでも病気であることは事実なので「もしかしたら・・」くらいには思っていたと思います。そんな状態の彼が「ジーパン刑事の殉職シーン」を見させられて感想を求められます。司会の古舘さんと阿川さんはもちろん、彼がそんな状態であることは知りません。そういった、ある意味で残酷な1コマもありましたが、逆にそういう状態の人間が考えていることや伝えたがっていることが、とても私の興味を引きました。終わりの方に彼が語っていることはなんだか我々へのメッセージのような気もします。

■1989年8月20日放送 日本テレビ
■司会:古舘伊知郎/阿川泰子  ゲスト:松田優作


おしゃれ30-30 おしゃれ30-30 おしゃれ30-30 おしゃれ30-30


古舘: ひとつよろしく。
松田: あ、よろしくお願いします。
阿川: それにしてもご無沙汰でございます。
松田: ご無沙汰です。ほんとに。
阿川: もう。うれしい。
古舘: 文学座時代の同級生なんすか。
阿川: うん。
おしゃれ30-30

テロップ 松田優作(38才)山口県下関市出身、S48年文学座研究室に入団。同期生に阿川泰子、高橋洋子がいる。同年東宝映画「狼の紋章」でデビュー。そして「太陽にほえろ!」のジーパン刑事役で一躍有名になる。
古舘: はあーあ。
阿川: うれしい。
古舘: 何年ぶりぐらい?
阿川: 出世がしらですもん。
松田: お互いに。
阿川: 12期だったわよね。あたしたち。
松田: そうそうそう。だから・・・15年くらいになるのかなあ。ねえ。
古舘: じゃあ、しょっちゅう一緒にいたり、飲みに行ったりした?

おしゃれ30-30

松田: はい。あのー・・・・・。
阿川: わたし、随分連れていってもらったわよ。
松田: 一番綺麗だったからねえ。
阿川: きゃあ・・。
古舘: 中で!?
松田: 結構、新劇の人達ってのは・・・こういうのが多い・・・。(笑)(手で顔をひねる)
古舘: はははは。
松田: そん中でもすごい綺麗どころでね。入るとこ間違えたんじゃないかっていうくらい、ほんとなんかあの、違ってましたね。

おしゃれ30-30

古舘: 違ってた。
阿川: 間違ったのは認めた。違ったみたい。あたし。
古舘: でも優作さんも違ってたんじゃないですか?なんか。割と。
阿川: 優作さんもね。ひときわねえ。全然違う世界の人だった。何故かっていうと・・・。
松田: 檻が要るってやつ?

おしゃれ30-30

阿川: う〜ん・・・・とにかくね、文学座って言う所はね、すごくやっぱりこう正統派の所でしょ?(優作さんは)ちょっとアウトローでしょ?やっぱりこう・・・。
古舘: ちょっとどころじゃないでしょうねえ。
阿川: うん。ちょっとどころじゃなくて、野性味あふれるタイプだから、珍しいタイプの人が来たって、みんなね、あの、試験受けに行ったその試験会場からしてね、あなたが目立ってたからね、「ほらあそこ見て見て、あの人」とかね、みんな言ってたの。
古舘: ほおー。で、どういうとこ、こう、みんなで飲みに行ったり、二人で仲良しだったんですか?
松田: 新宿だよね。新宿とか・・・。
阿川: 新宿のね、あたしすごく覚えているのが、何でしたっけ?ゴールデン街とか・・・。
松田: うん。ゴールデン街とか。
阿川: なんかそういう所。要するに私が、まあ、今では何とか行けると思いますけど、その、一人では行けそうもないような所。
松田: お金がなかったから・・・やっぱり・・・。
阿川: なかったですね・・・。
松田: ね、だから、みんな、持ち寄って飲めるような所。
古舘: 「今日、三千円通しな」みたいな、何かそう言う・・・?。
松田: いや、そんなん無いですよ。三千円通し何てのは・・・。ねえ?
古舘: もっともっと?
阿川: 三千円通しなんて・・・。
古舘: そうなったのはもっと裕福な時代?
阿川: もう、とんでもございません。
松田: そんなのもう、一晩わっとできる。
阿川: もうパアッですね。
古舘: はあ。じゃもう本当に、本当に持ち寄りで?
松田: 本当に持ち寄りですよ。
古舘: でも、松田さん、めちゃめちゃ飲むでしょ。得してましたね。割り勘だとしたら。
松田: そうですね。(笑)
古舘: ね。飲むと怖いんですよね。松田さんて。
松田: そんなことないですよ。
阿川: お酒飲むと何かをするっていうのは、あんまり印象にない。
松田: ないですよ?ねえ?
阿川: うん。印象にない。
古舘: 楽しく飲んでた?その当時は・・・。
阿川: うん。すごく面白い人だったから・・・。いろんなお話ししてくれたし。たとえば武勇伝てのは、ま、ちゃんとそれなりに理屈があって・・・。
松田: そうだっけ?あったっけ?そんなこと?
阿川: 何か腕吊ってるの見たことあるけど・・・・。
松田: 俺がだろ?
阿川: そうそう。(笑)
古舘: 何で腕吊ってたんすか?
松田: どうしたんですかね。あれ・・・。
古舘: 階段から落ちたとかそういう・・・・?
松田: いや、目立ちたかったのかも知れないすね。
古舘: そんなことはないでしょう?
松田: そんなことはないですね。(爆笑)
古舘: やっぱり・・・。ないですよねえ。
松田: あったかな。
阿川: あとは、なんかありましたね。殴ったら、殴った相手のまあ、お鼻ももちろん折れたんですけど、お手ての方も骨がどっかおかしくなったんですよ。それでやっぱりほら、私たち、みんなお金がないから、病院に連れていったんだけど、払うお金もあんまり無かったから、ドロンてこう、なった気も・・・。
松田: 踏み倒したね。あれ・・・。
古舘: 病院踏み倒せないですよ。普通。(笑)


古舘: 本当にでも、あれでしょ。
松田: 本当に会ってないんですよ。
古舘: 久しぶりなんでしょ?
松田: ええ、で僕はもう、大好きな人だったからね。
古舘: はあ。阿川さん、冥利に尽きるじゃないすか。
阿川: 困っちゃった。本当に、どうしましょう。
古舘: 松田優作、阿川泰子を語る!
阿川: ゆっくりしてって。
松田: うん。こんなもんでいいかな?(笑)
古舘: でたー!でた。(笑)二人とも青春時代そういう局面なかったすか?今と同じような・・・。
阿川: インスタント焼きそば作ったげようか?なんて。
松田: ねえ。

おしゃれ30-30

古舘: あ、そういうことやってたの?
阿川: でも、インスタント焼きそば一個作ったらねえ、一口くらいで食べちゃったの(笑)
松田: うそつけ。(笑)
古舘: いいや!いい話だ。うそつけ、までが・・・・(笑)
阿川: 違う、普通、何人か来たんだけど、じゃあ何にもないけどなんか「インスタント何とか」があるから、じゃ焼きそば作ろうかって。うんうんて、普通、少なくとも男の人も5口くらいはあるでしょ?なんか・・・・カポッてね(笑) すぐ食べちゃって。今作ったばかりなのに・・・。(笑)
古舘: 一口でいっちゃって・・・?
松田: いい加減にしろよ、お前。
阿川: ははは。(笑)
松田: 帰るぞほんとに・・・・。(笑)
古舘: 帰るぞ(笑)
阿川: でもさ、すごいさ、野性味あふれる食べ方で、「はあ」とか思って・・・。(笑)
松田: 馬鹿だよそれじゃ(笑)
阿川: うそお、いいじゃない。


阿川: だいたいでも、もう、自分で本とか書いてお芝居とか演ってたでしょ。もう、入ってすぐに・・・・。
松田: そうだったっけね?
阿川: うん、いろんなことなんか考えついてて、あとお友達、文学座だけじゃなくていろんな、前にも例えばつかこうへいさんとこのお友達とか鈴木忠さんと演ってた人とかみんな結構・・・。
松田: そういえば、そうそう、お世話になったんだよね。
阿川: そうなの。
松田: 稽古場探し回ったりね。
阿川: いやいや、大したあれじゃないけど、なんかじゃらじゃらしてたんだけど。
松田: 世話を焼くんですよ。
古舘: 世話焼き。
松田: うん。すごくなんか・・・・。細かいとこまでね。
古舘: でも、そういう風にされるとまた、嬉しいでしょ?された側は?
松田: そうですね。綺麗な人だったからね。
古舘: ねえ。結構、松田さん、好きだったんじゃないですか?
松田: はい。本当に(笑)一緒になっとけばよかったなあとか思ったりして。
古舘: 結構、実は狙ってた?
松田: もう、それはもう。
阿川: でも、すごい・・・。
古舘: でも堅かった?
阿川: いや違う。彼はね、大変熱烈なねえ、もう・・・あの・・・。
古舘: 人がいた?
阿川: いたんですよ。
松田: いや、そういう訳じゃないんだけど・・・。(笑)
古舘: ちょっと照れてませんか?(笑)
阿川: だってもう結婚してたもん。その時。
古舘: あ、そうなんだ・・。
松田: いや結婚はしてないけど・・・。
阿川: あ、そうでした?
古舘: 一緒に暮らしてた?
松田: ちょっとね・・・。
古舘: ちょっと(笑)・・・・ちょっとだけ・・(笑)


松田: これなあに?
阿川: なんか・・・。
松田: なんか随分綺麗な色だね。ジュース?
阿川: ねえ・・・・。何でしょう・・・(笑)ちゃらちゃらしちゃって、私たち(笑)
松田: 一口・・・・(笑)
阿川: 本当にもう、ちゃらちゃらしちゃって・・・・(笑)
古舘: さ、お父さん寝るとするかな(笑)
阿川: そういうこと言わないで、伊知郎さん。
古舘: でもあのお、そういう話もあれですけど、この日テレという局で、「太陽にほえろ!」もだいぶ昔で、僕ら学生の頃でね。あのお「おい、今日、太陽にほえろで死ぬぞ、松田優作が」なんつって、死ぬ前と、それから死んでから後の、あれがすごい評判になって、ブームみたいになってたんだけど、やっぱりその当時演ってて、その死に方ね、例えば。これはやっぱり自分かなり工夫するわけでしょ?
松田: え?ああ、死ぬとき?
古舘: 死ぬとき。
松田: う〜ん・・・・。忘れましたね。
古舘: だいぶ昔だから?
松田: ・・・・・。
阿川: あのシーン出てきます?
古舘: 用意してあるんです!
阿川: やっぱり!
スーパー (優作のシーン)昭和48.10.19.放送
阿川: きゃあ!懐かしい。ああいうの着てた。
松田: ねえ。
阿川: うん。あれ普段着でしょう?だって・・・・。
松田: 普段着のまんま。

おしゃれ30-30 おしゃれ30-30

(竜雷太、阿川泰子のシーン)
古舘: でた!
阿川: ギャー!ハハハハハ!
古舘: でた!
阿川: ハハハハハ。私?最高!
松田: あれ、俺ん時?
阿川: へ?そう。
松田: ほら、全然かわんないじゃない。
古舘: はあー。
阿川: 嬉しいー。これ欲しい、だって。
古舘: そして・・・このシーンです。

おしゃれ30-30

スーパー (ジーパン殉職シーン)昭和49.8.30.放送
阿川: ほら同じ顔してる。同じ顔してるって当たり前ね。
古舘: そりゃそうだよ、同じ人間だもん。
阿川: 失礼しました。・・・・・これ、手が個性的なのよ。
「なんじゃあこりゃあ!」
阿川: きいいいいいい。
松田: きいいいいい、だねえ。

おしゃれ30-30

「俺は死にたくないよ!待ってくれよほらぁ!俺は死にたくないよ・・・・。会田、ちょっと待ってくれよ・・・。な、どうして逃げちゃうんだよ・・・。待ってくれよ!」
阿川: どう?
松田: ん?
阿川: どう?ああいうの見るの。
松田: うーん・・・・・・・・・・・。がんばってたねぇ、でも。

おしゃれ30-30

古舘: ははは(笑)
阿川: 何かかわいくなっちゃう?自分のこと。
松田: ううん・・・・。あのぉ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。がんばってるよねえ。

おしゃれ30-30

阿川: うん。すごくあれすごくリアルだったねえ。
古舘: がんばってるよ・・・・。要するに、やられたこと気がつかない、なんじゃこれって言う、それから逆にねえ、それでほら、強がんないわけでしょ?最後は人間弱いみたいな、死にたくないよみたいなところへ入っていくっていうのは、すごい、僕は経験したことないけどなんかそうだろうなって気がするよねえ。
阿川: すごい、すごい、誠実にお芝居してた。
松田: うん・・・・。それしかないもんね?誠実に演るしか・・・・。ねえ?
古舘: あの当時いくつくらいなんだろ?
松田: あれで、・・・23くらいじゃないすかね?23か4か・・・・。
古舘: だから15年くらい前でしょ?
松田: ねえ。阿川さんも出ていたし!
阿川: あははは。やだあ。
古舘: 顔、ぽっちゃりとしてましたね。今より。
阿川: おかしいでしょ。よくあんなの・・・・。でもさあ・・・・・。
松田: 今より年増に見えるね。でも。
阿川: そう、あっちのが、あっちの時の方が全然年増。
松田: お水さんみたいでさあ。ねえ。
古舘: でも、お水の役だもんねえ。
阿川: だって、その役だもん。
松田: あ、その役なんだ。
阿川: 何いってんの。
松田: もうできてるんだ(笑)
阿川: 何いってんの。もう〜。(笑)
古舘: 何を・・・・(笑)何を言ってるんだか・・・。(笑)
古舘: はあ、懐かしいな。
松田: のめり込んじゃうからね。バチッと。この人もねえ。
古舘: あそう。阿川さん、のめり込むんだねえ。
松田: ほんと。
古舘: 真剣に演ってましたもんねえ。
阿川: 一生懸命やってましたねえ。可愛いねえ私たち・・・・。
松田: 素晴らしい。
古舘: いかに、いかに30▽30でアバンのせりふなんか覚えないかって、今いかに手を抜いているかっている・・・・。全部俺に任せますからねえ(笑)
阿川: いやあ下手な奴はやらないほうがいいと思って遠慮してるんですよ。
古舘: いやあ、やってますよ。ちゃんと・・・。はあー、それぞれの青春があったんだなぁ。あと、あのお「太陽にほえろ!」ね、だけじゃなくて「探偵物語」。これもあのお、今の若い世代でも相当それで憧れた奴いますけど。探偵ね。
阿川: 面白かったですね。なかなか。
古舘: あれもなかなかハチャメチャな部分があったけど。あれは、それまであった、結構ほら、旧態依然とした刑事ものとかあったでしょ?
松田: ええ。
古舘: ああいうのを壊したい、みたいな意図があった?
松田: そうですね。まぁあの、7人とか、もうだいたい決まって刑事だと。持ち回りで、ひとつのセリフを持ち回りでしゃべったりとかね。
阿川: うんうん。
松田: そういうの面倒くさかったから、一人で全部演りたいなと思ってたからね。
古舘: ああ、あの、何すか、その持ち回りっていうのはあれですか、「どうした!」とかいうと、こっちがパッと切り替えしで・・・。
松田: 「もしかしたら!」とか(笑)
古舘: 「どうしてなんだ!」
松田: 「それは!」とか(笑)
阿川: ははははは。あのさ、一人分をさ、7、8等分してさ、分けるの・・・・(笑)
古舘: あれ、何で、やっぱり一人ひとりのワンショットを撮るという、あれがあるのかな?
松田: でしょうね、それはもうこの局が(辺りを見回しながら)一番得意でしょう。それは。(爆笑)
古舘: おお、でた!(笑)でも当時、刑事ものなんかでこういうパターンなんだっていうふうに思ってる、どっちかっていうと頭の固い人達は あれを批判したんじゃないですか?
松田: いや、そんなことはないですよ。
古舘: あそうですか?日テレの上層部は「なんだこれは?!」っていった奴もいたって・・・。
松田: いやいやもう・・・・。あの・・・・・そうですね(笑)
古舘: ちょっと見てみますかぁ?

おしゃれ30-30

スーパー (「探偵物語」第一話)昭和54.9.18.放送
阿川: ははは。ああいう言い方、普段もしてたじゃない(笑)
古舘: はあ。こういう刑事も、まあいないですけどねえ。
松田: いないですね。情けないですねえ。よく事件解決できるな、あれで(爆笑)
古舘: いいなぁ。自分で演ってて。(笑)


松田: 一番難しいよね。家庭は。家庭というパーツは。
阿川: あそうお?
古舘: パーツは。
松田: やっぱり一番演技が必要だよね。だから、「素 (す)」じゃあもう行き詰まっちゃうでしょ?

おしゃれ30-30

阿川: ふーん。面白い表現・・・。
松田: 自分が何十年生きてきた「素」なんてのは通 用しなくなっちゃう訳でしょ?だから楽しい演技とか色々しなきゃいけない。悲しい、わざと悲しくしたりとか。ねえ?あのお・・そういう演技が・・・大変ですよね。だけど面白いですよ。
古舘: その分?
松田: うん。
古舘: あのほら、俺なんかも単純に、結婚する前までは、男は外で働くんだと。家帰ったら家が港なんだと。ね?くつろぐ場所なんだ、なんて思ってたから。結婚して日々分かるね。今言ったことが。外での戦いもあるんですよ。ね?つかれも引きずるんですよ。そりゃ。今日はゲストが松田優作だったから百倍気を使った。(笑)ありますよはっきり言って。ねえ訳ねえですよ。それを、家帰って・・・・。
阿川: いやー。一か月くらい前から下準備してたもんね。トレーニングして。(笑)
古舘: そう。どうしてやろうかと思って。(笑)
阿川: どうしてやろうか(笑)
古舘: もう役者界のタイガー・ジェット・シンですからね。
松田: おいおいおい!
古舘: え?
松田: おいおい。
古舘: でもね・・・・・・・。怒ってました?今?
松田: いやいやいや。(笑)
古舘: 大丈夫すか?大丈夫すか?いやあびっくりした。(爆笑)
阿川: おいおいって言ったのが危なかったね。
古舘: ちょっと怖かったすけど・・・・。
古舘: そうすっと夫婦生活で家に帰ってきてまでこんなに気を使うのは、演技っていう言い方でなくてですよ、こう気を使うのはとんでもないな んて思ってるのはまだウブなんでしょうかね。俺なんか。
松田: だから、気を使わないでそういうふうになれば。最初はやっぱり気を使わなきゃいけないでしょ。なんでも始まりは・・・。
古舘: うん。
松田: なんかひとつ、もひとつ先に行きたいなと思うと最初はちょっとなんか無理して作んないと。ねえ。
古舘: うん。それ疲れるの。すごく。
松田: うん。だから、それがだんだんスムースになっていくようになると、面白くなってきますよ。
古舘: なるほどなあ。ひとつハードル越えなきゃいけないわけだ。
松田: そうですねえ。ここがちょっと大変ですけどねえ。
古舘: 大変。やっぱり。
松田: うん。やっぱり、新しい方がいいでしょ?すっとまた新しい方に行きたくなっちゃうでしょ。
古舘: まあ、それね。単純にありますよね。
松田: ねえ。同じ事の繰り返し。結局同じ事だから。
古舘: うん。
松田: それだとね。
古舘: うん。
松田: 結局そこへ行けないわけだから。

おしゃれ30-30

古舘: うん。
松田: 毎回そこまでで、新鮮さが落ちてくるとまた新しいとこいくっていう、そういう人たくさんいるでしょ。芸能界って。
古舘: うん。まあ、多いですよね。(笑)
松田: ぱー。(クルクルパーのジェスチャー)(笑) 笑)
古舘: でたー!(笑)


松田: それで、芸人はその、なんすか、あの、悲惨な方がいい、破滅型がいいとかなんとかいって、みんな泣きながら死んでいくわけだからね。結局最後は・・。
古舘: うん。
松田: 自由になれなくて、結局。
古舘: うん。
松田: なんかお酒でいったり、女にいったりとか。そんなのは結局しばられていくわけだから。
古舘: うん。
松田: 結局、自由じゃないですよね?
古舘: うん。
松田: だから手っとり早く手にはいる方法で演技するっていったらやっぱり仕事の部分でしょ?
古舘: うん。
松田: だけど生活の部分が全然長いんですよね。
古舘: うん。そりゃそうですよね。
松田: ねえ。
古舘: うん。
松田: ずっと続いていくわけだから。
古舘: うん。
松田: そこが巧妙にこう、演じられていくようになると、すっごいですよね。
古舘: ほお。でもそのね、巧妙に演じるっていうのはね。ちょっと聞きたいんですけど、要するに俺なんかまだできちゃいないんだけど、例えば、普通だったらね、例えば。例えばですよ?遅く帰った、ね?で「あんた何よ」・・・。
松田: うん。
古舘: 「何よじゃねえよ、お前俺は仕事やってて、お前、ストレスたまってていいじゃないかよお前よお」とか、例えばその後、喧嘩になるってのは具体例がありますよね?そういう時どう演技かますんですか?
松田: 例えばどういう演技、っていうんじゃないんですよね。だから要するに、相手の・・相手とかの距離とか、それから・・・・ちょっとした動きとかっていう・・・ことがあるんですよ。
古舘: うん。
松田: 細かーく。
古舘: うん。
松田: なんかそういうことを全部で・・・全部で感じるっていうか・・。
古舘: うん。
松田: 基本的に・・・あのお・・・・なんつうんだろ・・・僕等っていうのは、まず目で見たりとか、耳で聞いたりとか、ようするに五感を発達させるとかなんとか言ってるけど、むしろ逆に・・・・身動きさせた方がいいみたいな。

おしゃれ30-30

阿川: ふうん。
松田: 「怒ってる」とかっていう意思も捨てちゃうみたいなさ、「あ、こいつ怒ってんな」とかっていうのもやめるっていうか。だから目つぶっちゃうっていうかさ、そういう時は。
古舘: うん。
松田: そういうの、とにかく、なんか、わかってきますよ。だんだん。そういうの、だんだんこう、無くなってくると、あの・・・・楽しくなってくる。
古舘: はあ。そういうことだと、なかなか、こういうことが楽しいんだ、こういう具体例だってのは、言いづらいわけだ。
松田: 言いづらいですねえ。
阿川: んー、だから具体的なことじゃないね?
古舘: こういうシチュエーションの、テクニックじゃないでしょ?
松田: いや、違います。
阿川: すごく精神・・・・。
古舘: 俺ははじめそういうふうにとったんだけど・・・。
阿川: でも、精神だね。今の話だと・・・。
松田: 俺がやっぱり、古舘さんの・・・あの・・ときどき、司会とかテレビなんか見てて、お、すごいなとかって感じたりする、なんか「入ってる」とかね?その状態が普段になると楽しくなる。
古舘: なるほどねえ。
松田: でもなかなかそれ、安定しないすけどね。
古舘: うん。あのお、なんか、ハイ現象みたいなのにもつながると思うんだよね。あのお、脳下垂体からね、βエンドルフィンていう物質が出てね、モルヒネの10倍の麻薬効果があって、それでランニングハイとか・・・・。
阿川: すごーい。生物学。
古舘: ランニング以外の世界にも、僕はトーキングハイっていうのを一回だけやったことがあんだけど、なんかこう「もういやだな」っていうところまでやっちゃって、ポンって楽しくなっちゃった・・・。なんかそのハイ現象みたいなのにも、ちょっとその「演技」って、さっき言ってた言葉がつながっていくような気がしますね。
松田: そうそうそう。
古舘: 俺、家庭内でハイいけないわ。今現在は・・・。
松田: いや、いけますって。だから今やってる仕事、とにかく、そういう状態をさ、ねえ、作り出していけば。絶対そうなりますよ。
古舘: あそう!?大変だけどね?
松田: うん、だけどそんな話、したってしょうがないしね。
古舘: うん。
松田: 遊んでようぜ!みたいなもんですよね。
阿川: ふふふ。
古舘: か〜っこいいですねえ!
松田: かっこいいかね?
阿川: こういうとこがねえ、受けるのよお。やっぱり・・。だから男の子のファンすごくいるのよね。私の周りの人もねえ、やっぱ、「やっぱ優作さん何やってもかっこいいですよね」とかって、みんな、なんか、そうやっぱり、今みたいなところがクラクラってくるとこなのね。

おしゃれ30-30


エンディング

古舘: というわけでですねえ、あのー・・、毎回会員証を渡しているんです。

おしゃれ30-30

松田: はい。
阿川: 今日は早かったんじゃないですか?
古舘: ああ、今日はもう早くできました。あのー、自分たちの歌を聴きながらすぐ書けました。
阿川: ふふっ。ほーんと?
古舘: ええ。
阿川: そう?
古舘: 今日はマジで早かった。今日は、まあ、とりあえずこういう会員証が。
松田: ああ、そうすか。

おしゃれ30-30

古舘: ね、こうゴールドで・・。ね。そいでね、裏にいつもね、キャッチフレーズひとつ。感想をのせてんです。で、えー、今日、ま、話した感想を言えば、「松田優作の家族ゲームは、演技を越えた自然遊戯」・・・・。
松田: うーん。
阿川: ほお。
古舘: どうでしょうか?(笑)
松田: いいんじゃないすかねえ。
古舘: いい?このまま?
松田: もう一回言って下さい。
古舘: 「松田優作の家族ゲームは演技を超えた自然遊戯」
松田: うん。(笑)

おしゃれ30-30

古舘: 気に入ってない!?
松田: いやいや。(笑)
阿川: いや、良かった(笑)
松田: これ、もらえるんすか?
古舘: そのままあげます。それで、あげたからにはですねえ、一個聞きたいんですけど、あのお、松田優作にとって、一番・・・一番か二番でいいんですけど、おしゃれだった瞬間?

おしゃれ30-30

松田: ふふふ。おしゃれ・・・おしゃれってのがもうなんか「死に語」じゃないすかね?なんか。

おしゃれ30-30

阿川: はははは。(笑)
松田: どうですかねえ。恥ずかしいもんがあるねえ。なんか・・・。
古舘: じゃあ振った俺なんかもっと恥ずかしいすねえ。
阿川: ははは。振る方は大丈夫。
古舘: 大丈夫?
阿川: 振る方は大丈夫。
古舘: 毎回「決め」だから?
松田: まあしょうがないすよ。仕事ですからねえ。そりゃ。(爆笑)
阿川: はははは。
古舘: なーんか答えちゃうと、かっちょ悪いっていう・・・・・。
松田: いやあそういうんじゃないんだけど・・いや、あの、質問とは別に、今ちょっと感想だけしゃべったんですけど・・・。
阿川: うん。なんか泉谷さんがほら「"お"を取ったら"しゃれ"じゃねえか、馬鹿野郎」とかなんかいってたけど・・・。
古舘: そういうのでもいいんですよ。
松田: 馬鹿だからねえ。あいつは。
古舘: はははははは。(爆笑)
松田: あいつからそれ外すともう何もなくなっちゃうから。
古舘: あ、そうですか。
松田: うん。あれ、おしゃれだよね、あいつは・・。
古舘: そういう意味では・・・・。
松田: だから、どこでもバチッと言うでしょ。あいつは。
古舘: うん。
松田: その時に感じたね。やっぱ「おしゃれ」っていうの・・・。
古舘: まとめましたねえ。
阿川: まとめましたねえ。
古舘: まとめましたね。
松田: 泉谷さんすいません!(笑)

おしゃれ30-30

古舘: 痛烈に皮肉った後に謝っておりますけれども・・・・(笑)なるほどねえ。
阿川: 良かったですねえ、泉谷さん。
古舘: うん、その、おしゃれっていう意味は良く分かりました。
阿川: 今日はすごく私はうれしかった。久しぶりに会えて・・。
古舘: そうだよ。
松田: ほんとね。ほんと、あのお、うれしかった。どうもありがとう。
阿川: ありがとう、来てくれて。うれしい。
松田: チュッチュッチュッ。(唇で音を出す)

おしゃれ30-30

阿川: チュッチュッチュッだって、あははは。

おしゃれ30-30

古舘: これ一番おしゃれな瞬間ですよ、俺から言わすと・・・。
阿川: 俺から言わすと(笑)・・・。
古舘: どうもありがとうございました。
松田: どうもありがとうございました。
阿川: ありがとうございました。

おしゃれ30-30


番組終了後

古舘: 別に、そんなに意図的にストイックに鍛えたりしてないすか?
松田: もう、興味ないですね・・・・。なんか。
古舘: そう、いちいち、ストイックにやることが?
松田: うーん・・ストックもないし・・・。

おしゃれ30-30

古舘: ふふふ。(笑)
松田: 面白くないね。(笑)
古舘: 面白くない?いや、この空間がじゃないでしょ?

おしゃれ30-30

松田: いや、自分が今。自分で・・・。(笑)
古舘: そうでしょ?
松田: 失礼しました。(笑)
古舘: ここが面白くないなってのはまずいなって・・・。
松田: 失礼しました・・(笑)。そういう意味じゃなくて・・・・。(笑)


松田: どうでもいいやな、もう、芝居なんて・・・。(笑)
古舘: うそでしょう?
松田: いやほんとに。
古舘: この頃そういう境地?
松田: いやいや、境地も何も・・・・。
古舘: でもやっぱり、松田さんていうのはギンギンっていうイメージあるんですけどね。むしろ越えちゃった?そういう?
松田: いやいや、そんなことないんですけども・・・・うーん。
古舘: 「芝居なんかどうでもいい」っていってるってことは、裏腹にとっていいんですか?
松田: いや、まあ、そのまんまですよ・・。

おしゃれ30-30

<終>


 ここに再録したものは、彼が亡くなったあとに追悼として再放送されたものです。追悼編では古舘さんも阿川さんも、沈痛な表情でした。
おしゃれ30-30 おしゃれ30-30

古舘さんは、優作が「がんばってたよねぇ」と、自分で過去の自分を励ますシーンがすごく印象的だったと語っていました。私もこのシーンには衝撃を受けました。阿川さんは「昔から(文学座時代から)仲良かったよねって、最後にお別れを言いに来てくれたようだった」と感じられたようです。8月に放送され、それから3ヶ月もしないうちに旅立ってしまった優作に対してお二人とも複雑な思いだったことでしょう。

 しかし、あれほど映画に、演技にこだわった優作に「芝居なんかもうどうでもいい」と語らせていたものは何だったのでしょうか?さらに言えば過去を振り返ることが何よりも嫌いだった優作にとって、このような懐古的番組に出演しようと思ったきっかけは何だったのでしょう?優作の話し方は、象徴的な言葉や概念的なものが多く、わかりにくいですが、「ある領域に達した人」の言葉として今後も考えていこうと思います。

おしゃれ30-30

<特別付録>
 もしも松田優作が生きていたら・・・。という事でこんなインタビューの文章を作ってみました。


[我が心の松田優作]に戻る