阿川: |
う〜ん・・・・とにかくね、文学座って言う所はね、すごくやっぱりこう正統派の所でしょ?(優作さんは)ちょっとアウトローでしょ?やっぱりこう・・・。 |
古舘: |
ちょっとどころじゃないでしょうねえ。 |
阿川: |
うん。ちょっとどころじゃなくて、野性味あふれるタイプだから、珍しいタイプの人が来たって、みんなね、あの、試験受けに行ったその試験会場からしてね、あなたが目立ってたからね、「ほらあそこ見て見て、あの人」とかね、みんな言ってたの。 |
古舘: |
ほおー。で、どういうとこ、こう、みんなで飲みに行ったり、二人で仲良しだったんですか? |
松田: |
新宿だよね。新宿とか・・・。 |
阿川: |
新宿のね、あたしすごく覚えているのが、何でしたっけ?ゴールデン街とか・・・。 |
松田: |
うん。ゴールデン街とか。 |
阿川: |
なんかそういう所。要するに私が、まあ、今では何とか行けると思いますけど、その、一人では行けそうもないような所。 |
松田: |
お金がなかったから・・・やっぱり・・・。 |
阿川: |
なかったですね・・・。 |
松田: |
ね、だから、みんな、持ち寄って飲めるような所。 |
古舘: |
「今日、三千円通しな」みたいな、何かそう言う・・・?。 |
松田: |
いや、そんなん無いですよ。三千円通し何てのは・・・。ねえ? |
古舘: |
もっともっと? |
阿川: |
三千円通しなんて・・・。 |
古舘: |
そうなったのはもっと裕福な時代? |
阿川: |
もう、とんでもございません。 |
松田: |
そんなのもう、一晩わっとできる。 |
阿川: |
もうパアッですね。 |
古舘: |
はあ。じゃもう本当に、本当に持ち寄りで? |
松田: |
本当に持ち寄りですよ。 |
古舘: |
でも、松田さん、めちゃめちゃ飲むでしょ。得してましたね。割り勘だとしたら。 |
松田: |
そうですね。(笑) |
古舘: |
ね。飲むと怖いんですよね。松田さんて。 |
松田: |
そんなことないですよ。 |
阿川: |
お酒飲むと何かをするっていうのは、あんまり印象にない。 |
松田: |
ないですよ?ねえ? |
阿川: |
うん。印象にない。 |
古舘: |
楽しく飲んでた?その当時は・・・。 |
阿川: |
うん。すごく面白い人だったから・・・。いろんなお話ししてくれたし。たとえば武勇伝てのは、ま、ちゃんとそれなりに理屈があって・・・。 |
松田: |
そうだっけ?あったっけ?そんなこと? |
阿川: |
何か腕吊ってるの見たことあるけど・・・・。 |
松田: |
俺がだろ? |
阿川: |
そうそう。(笑) |
古舘: |
何で腕吊ってたんすか? |
松田: |
どうしたんですかね。あれ・・・。 |
古舘: |
階段から落ちたとかそういう・・・・? |
松田: |
いや、目立ちたかったのかも知れないすね。 |
古舘: |
そんなことはないでしょう? |
松田: |
そんなことはないですね。(爆笑) |
古舘: |
やっぱり・・・。ないですよねえ。 |
松田: |
あったかな。 |
阿川: |
あとは、なんかありましたね。殴ったら、殴った相手のまあ、お鼻ももちろん折れたんですけど、お手ての方も骨がどっかおかしくなったんですよ。それでやっぱりほら、私たち、みんなお金がないから、病院に連れていったんだけど、払うお金もあんまり無かったから、ドロンてこう、なった気も・・・。 |
松田: |
踏み倒したね。あれ・・・。 |
古舘: |
病院踏み倒せないですよ。普通。(笑) |
阿川: |
うん。すごくあれすごくリアルだったねえ。 |
古舘: |
がんばってるよ・・・・。要するに、やられたこと気がつかない、なんじゃこれって言う、それから逆にねえ、それでほら、強がんないわけでしょ?最後は人間弱いみたいな、死にたくないよみたいなところへ入っていくっていうのは、すごい、僕は経験したことないけどなんかそうだろうなって気がするよねえ。 |
阿川: |
すごい、すごい、誠実にお芝居してた。 |
松田: |
うん・・・・。それしかないもんね?誠実に演るしか・・・・。ねえ? |
古舘: |
あの当時いくつくらいなんだろ? |
松田: |
あれで、・・・23くらいじゃないすかね?23か4か・・・・。 |
古舘: |
だから15年くらい前でしょ? |
松田: |
ねえ。阿川さんも出ていたし! |
阿川: |
あははは。やだあ。 |
古舘: |
顔、ぽっちゃりとしてましたね。今より。 |
阿川: |
おかしいでしょ。よくあんなの・・・・。でもさあ・・・・・。 |
松田: |
今より年増に見えるね。でも。 |
阿川: |
そう、あっちのが、あっちの時の方が全然年増。 |
松田: |
お水さんみたいでさあ。ねえ。 |
古舘: |
でも、お水の役だもんねえ。 |
阿川: |
だって、その役だもん。 |
松田: |
あ、その役なんだ。 |
阿川: |
何いってんの。 |
松田: |
もうできてるんだ(笑) |
阿川: |
何いってんの。もう〜。(笑) |
古舘: |
何を・・・・(笑)何を言ってるんだか・・・。(笑) |
古舘: |
はあ、懐かしいな。 |
松田: |
のめり込んじゃうからね。バチッと。この人もねえ。 |
古舘: |
あそう。阿川さん、のめり込むんだねえ。 |
松田: |
ほんと。 |
古舘: |
真剣に演ってましたもんねえ。 |
阿川: |
一生懸命やってましたねえ。可愛いねえ私たち・・・・。 |
松田: |
素晴らしい。 |
古舘: |
いかに、いかに30▽30でアバンのせりふなんか覚えないかって、今いかに手を抜いているかっている・・・・。全部俺に任せますからねえ(笑) |
阿川: |
いやあ下手な奴はやらないほうがいいと思って遠慮してるんですよ。 |
古舘: |
いやあ、やってますよ。ちゃんと・・・。はあー、それぞれの青春があったんだなぁ。あと、あのお「太陽にほえろ!」ね、だけじゃなくて「探偵物語」。これもあのお、今の若い世代でも相当それで憧れた奴いますけど。探偵ね。 |
阿川: |
面白かったですね。なかなか。 |
古舘: |
あれもなかなかハチャメチャな部分があったけど。あれは、それまであった、結構ほら、旧態依然とした刑事ものとかあったでしょ? |
松田: |
ええ。 |
古舘: |
ああいうのを壊したい、みたいな意図があった? |
松田: |
そうですね。まぁあの、7人とか、もうだいたい決まって刑事だと。持ち回りで、ひとつのセリフを持ち回りでしゃべったりとかね。 |
阿川: |
うんうん。 |
松田: |
そういうの面倒くさかったから、一人で全部演りたいなと思ってたからね。 |
古舘: |
ああ、あの、何すか、その持ち回りっていうのはあれですか、「どうした!」とかいうと、こっちがパッと切り替えしで・・・。 |
松田: |
「もしかしたら!」とか(笑) |
古舘: |
「どうしてなんだ!」 |
松田: |
「それは!」とか(笑) |
阿川: |
ははははは。あのさ、一人分をさ、7、8等分してさ、分けるの・・・・(笑) |
古舘: |
あれ、何で、やっぱり一人ひとりのワンショットを撮るという、あれがあるのかな? |
松田: |
でしょうね、それはもうこの局が(辺りを見回しながら)一番得意でしょう。それは。(爆笑) |
古舘: |
おお、でた!(笑)でも当時、刑事ものなんかでこういうパターンなんだっていうふうに思ってる、どっちかっていうと頭の固い人達は
あれを批判したんじゃないですか? |
松田: |
いや、そんなことはないですよ。 |
古舘: |
あそうですか?日テレの上層部は「なんだこれは?!」っていった奴もいたって・・・。 |
松田: |
いやいやもう・・・・。あの・・・・・そうですね(笑) |
古舘: |
ちょっと見てみますかぁ? |
阿川: |
ふーん。面白い表現・・・。 |
松田: |
自分が何十年生きてきた「素」なんてのは通
用しなくなっちゃう訳でしょ?だから楽しい演技とか色々しなきゃいけない。悲しい、わざと悲しくしたりとか。ねえ?あのお・・そういう演技が・・・大変ですよね。だけど面白いですよ。 |
古舘: |
その分? |
松田: |
うん。 |
古舘: |
あのほら、俺なんかも単純に、結婚する前までは、男は外で働くんだと。家帰ったら家が港なんだと。ね?くつろぐ場所なんだ、なんて思ってたから。結婚して日々分かるね。今言ったことが。外での戦いもあるんですよ。ね?つかれも引きずるんですよ。そりゃ。今日はゲストが松田優作だったから百倍気を使った。(笑)ありますよはっきり言って。ねえ訳ねえですよ。それを、家帰って・・・・。 |
阿川: |
いやー。一か月くらい前から下準備してたもんね。トレーニングして。(笑) |
古舘: |
そう。どうしてやろうかと思って。(笑) |
阿川: |
どうしてやろうか(笑) |
古舘: |
もう役者界のタイガー・ジェット・シンですからね。 |
松田: |
おいおいおい! |
古舘: |
え? |
松田: |
おいおい。 |
古舘: |
でもね・・・・・・・。怒ってました?今? |
松田: |
いやいやいや。(笑) |
古舘: |
大丈夫すか?大丈夫すか?いやあびっくりした。(爆笑) |
阿川: |
おいおいって言ったのが危なかったね。 |
古舘: |
ちょっと怖かったすけど・・・・。 |
古舘: |
そうすっと夫婦生活で家に帰ってきてまでこんなに気を使うのは、演技っていう言い方でなくてですよ、こう気を使うのはとんでもないな
んて思ってるのはまだウブなんでしょうかね。俺なんか。 |
松田: |
だから、気を使わないでそういうふうになれば。最初はやっぱり気を使わなきゃいけないでしょ。なんでも始まりは・・・。 |
古舘: |
うん。 |
松田: |
なんかひとつ、もひとつ先に行きたいなと思うと最初はちょっとなんか無理して作んないと。ねえ。 |
古舘: |
うん。それ疲れるの。すごく。 |
松田: |
うん。だから、それがだんだんスムースになっていくようになると、面白くなってきますよ。 |
古舘: |
なるほどなあ。ひとつハードル越えなきゃいけないわけだ。 |
松田: |
そうですねえ。ここがちょっと大変ですけどねえ。 |
古舘: |
大変。やっぱり。 |
松田: |
うん。やっぱり、新しい方がいいでしょ?すっとまた新しい方に行きたくなっちゃうでしょ。 |
古舘: |
まあ、それね。単純にありますよね。 |
松田: |
ねえ。同じ事の繰り返し。結局同じ事だから。 |
古舘: |
うん。 |
松田: |
それだとね。 |
古舘: |
うん。 |
松田: |
結局そこへ行けないわけだから。 |
松田: |
それで、芸人はその、なんすか、あの、悲惨な方がいい、破滅型がいいとかなんとかいって、みんな泣きながら死んでいくわけだからね。結局最後は・・。 |
古舘: |
うん。 |
松田: |
自由になれなくて、結局。 |
古舘: |
うん。 |
松田: |
なんかお酒でいったり、女にいったりとか。そんなのは結局しばられていくわけだから。 |
古舘: |
うん。 |
松田: |
結局、自由じゃないですよね? |
古舘: |
うん。 |
松田: |
だから手っとり早く手にはいる方法で演技するっていったらやっぱり仕事の部分でしょ? |
古舘: |
うん。 |
松田: |
だけど生活の部分が全然長いんですよね。 |
古舘: |
うん。そりゃそうですよね。 |
松田: |
ねえ。 |
古舘: |
うん。 |
松田: |
ずっと続いていくわけだから。 |
古舘: |
うん。 |
松田: |
そこが巧妙にこう、演じられていくようになると、すっごいですよね。 |
古舘: |
ほお。でもそのね、巧妙に演じるっていうのはね。ちょっと聞きたいんですけど、要するに俺なんかまだできちゃいないんだけど、例えば、普通だったらね、例えば。例えばですよ?遅く帰った、ね?で「あんた何よ」・・・。 |
松田: |
うん。 |
古舘: |
「何よじゃねえよ、お前俺は仕事やってて、お前、ストレスたまってていいじゃないかよお前よお」とか、例えばその後、喧嘩になるってのは具体例がありますよね?そういう時どう演技かますんですか? |
松田: |
例えばどういう演技、っていうんじゃないんですよね。だから要するに、相手の・・相手とかの距離とか、それから・・・・ちょっとした動きとかっていう・・・ことがあるんですよ。 |
古舘: |
うん。 |
松田: |
細かーく。 |
古舘: |
うん。 |
松田: |
なんかそういうことを全部で・・・全部で感じるっていうか・・。 |
古舘: |
うん。 |
松田: |
基本的に・・・あのお・・・・なんつうんだろ・・・僕等っていうのは、まず目で見たりとか、耳で聞いたりとか、ようするに五感を発達させるとかなんとか言ってるけど、むしろ逆に・・・・身動きさせた方がいいみたいな。 |
阿川: |
ふうん。 |
松田: |
「怒ってる」とかっていう意思も捨てちゃうみたいなさ、「あ、こいつ怒ってんな」とかっていうのもやめるっていうか。だから目つぶっちゃうっていうかさ、そういう時は。 |
古舘: |
うん。 |
松田: |
そういうの、とにかく、なんか、わかってきますよ。だんだん。そういうの、だんだんこう、無くなってくると、あの・・・・楽しくなってくる。 |
古舘: |
はあ。そういうことだと、なかなか、こういうことが楽しいんだ、こういう具体例だってのは、言いづらいわけだ。 |
松田: |
言いづらいですねえ。 |
阿川: |
んー、だから具体的なことじゃないね? |
古舘: |
こういうシチュエーションの、テクニックじゃないでしょ? |
松田: |
いや、違います。 |
阿川: |
すごく精神・・・・。 |
古舘: |
俺ははじめそういうふうにとったんだけど・・・。 |
阿川: |
でも、精神だね。今の話だと・・・。 |
松田: |
俺がやっぱり、古舘さんの・・・あの・・ときどき、司会とかテレビなんか見てて、お、すごいなとかって感じたりする、なんか「入ってる」とかね?その状態が普段になると楽しくなる。 |
古舘: |
なるほどねえ。 |
松田: |
でもなかなかそれ、安定しないすけどね。 |
古舘: |
うん。あのお、なんか、ハイ現象みたいなのにもつながると思うんだよね。あのお、脳下垂体からね、βエンドルフィンていう物質が出てね、モルヒネの10倍の麻薬効果があって、それでランニングハイとか・・・・。 |
阿川: |
すごーい。生物学。 |
古舘: |
ランニング以外の世界にも、僕はトーキングハイっていうのを一回だけやったことがあんだけど、なんかこう「もういやだな」っていうところまでやっちゃって、ポンって楽しくなっちゃった・・・。なんかそのハイ現象みたいなのにも、ちょっとその「演技」って、さっき言ってた言葉がつながっていくような気がしますね。 |
松田: |
そうそうそう。 |
古舘: |
俺、家庭内でハイいけないわ。今現在は・・・。 |
松田: |
いや、いけますって。だから今やってる仕事、とにかく、そういう状態をさ、ねえ、作り出していけば。絶対そうなりますよ。 |
古舘: |
あそう!?大変だけどね? |
松田: |
うん、だけどそんな話、したってしょうがないしね。 |
古舘: |
うん。 |
松田: |
遊んでようぜ!みたいなもんですよね。 |
阿川: |
ふふふ。 |
古舘: |
か〜っこいいですねえ! |
松田: |
かっこいいかね? |
阿川: |
こういうとこがねえ、受けるのよお。やっぱり・・。だから男の子のファンすごくいるのよね。私の周りの人もねえ、やっぱ、「やっぱ優作さん何やってもかっこいいですよね」とかって、みんな、なんか、そうやっぱり、今みたいなところがクラクラってくるとこなのね。 |